給与トップ > 相談事例集 > 能力主義で減給に?中小企業の賃金制度が社員の信頼を失う瞬間

能力主義で減給に

他のコンサル会社に賃金制度の依頼をしたが、人事考課で悪い結果が続くと、基本給が減給になるという仕組みでした。その制度を発表したら、社内が暗くなってしまった。実際に減給になった人はいないのに…。

(東京都・製造業・社員200人・50代・社長)

.……正直に言っていいですか。この話、誰にも弱音を吐けなかったんです。 .
ええ。どうぞ。

.中小企業の社長って、最終的には全部、自分で決めなきゃいけないでしょう。賃金制度も、人事も、会社の将来も。
だから、他のコンサル会社に中小企業の賃金制度を依頼したときも、「これが正解なんだ」と自分に言い聞かせていました。 .
そうだったんですね。

.人事考課で悪い評価が続いたら、基本給が下がる仕組みでした。でも私は、「厳しいけれど、公平な中小企業の賃金制度だ」と思ったんです。甘い会社だと思われたくなかったし、社員にも成長してほしかった。今思えば、自分を納得させていた部分もあったかもしれません。 .
社長ご自身も、迷いながらだったんですね。

.ええ。制度を発表した瞬間の、あの空気は忘れられません。誰も反論しない。でも、誰も納得していない。「これは本当に、うちの中小企業に合った賃金制度なのか」
その疑問が、私の中でも湧き始めていました。 .
その違和感、大事です。

.説明会の最後、社員が言いました。「評価が低い人は、給料が下がるということですか?」そのとき私は、「頑張った人が評価される制度だ」と答えましたが……。
自分でも、どこか歯切れが悪かった。 .
どんな状況に。

.面談する側が、どんどん疲れていった。評価を伝えるたびに、反論される。感情をぶつけられる。「自分はもっと評価されるべきだ」「その評価は不公平だ」「納得できない」
それでも、「納得してもらうまで続けろ」という前提がある。
正直に言えば、自分がD評価になったらどう感じるか、そこまで想像できていなかったんです。 .
中小企業の賃金制度では、そこが一番難しいところです。

.その社員は続けました。「一度嫌われたら、もう取り返しがつかない会社にはしてほしくない」と。その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられました。
私は、そんな会社を作りたくて社長をやっているわけじゃない。
でも、社員からは、そう見えかねない中小企業の賃金制度だったんだと、後から気づいたんです。 .
社長、それはとても自然な気づきです。

.説明会を切り上げたあと、「やってしまったかもしれない」。そんな思いが頭から離れませんでした。
雑談が消え、社員が私の顔色をうかがうようになった。中小企業だからこそ、空気の変化がはっきり分かるんです。 .
社長ご自身も、苦しかったでしょう。

.はい。夜、事務所で一人になると、「この中小企業の賃金制度を、このまま進めていいのか」「社員を守れているのか」「自分は間違っていないのか」そんなことばかり考えていました。 .
それで、コンサルの先生の説明を思い出されたんですね。

.そうです。「減額は10%まで」「最低賃金は下回らない」。その言葉に、正直、すがりたかった。「法的に大丈夫なら、間違いじゃないはずだ」と。
でも……どこかで分かっていたんです。これは中小企業の賃金制度として、社員の心を置き去りにしている、と。 .
社長、それに気づけたこと自体が、何より大きいです。

.北見事務所さんなら、こんな提案はしないんですよね。 .
はい。中小企業の賃金制度として、給与を引き下げる提案は基本的にしません。

.その言葉を聞いて、正直、ほっとしました。「やっぱり、そうだよな」と。 .
中小企業の賃金制度は、社員管理の道具ではなく、社長の覚悟と人柄がにじみ出るものです。

.今回のことは、失敗かもしれません。でも……無駄にはしたくない。 .
ええ。これは、中小企業の社長が次の一段階に進むための経験です。

.減らさない能力主義。立て直せる中小企業の賃金制度。それなら、もう一度向き合える気がします。 .
大丈夫です。社員も、社長の迷いと本気は、必ず見ていますから。

.……最後に、一つだけ、正直な気持ちを言ってもいいですか。 .
もちろんです。

.あの経営コンサルの先生を、私は責めたいわけじゃないんです。理屈は通っていましたし、資料も立派でした。「中小企業の賃金制度」を、型として整えてくれたこと自体は、ありがたかった。  でも……今なら分かります。あの提案は、中小企業の社長が毎日向き合っている現実までは、見えていなかった。 .
現実、ですか。

.ええ。社員と毎日顔を合わせること。ちょっとした一言や、空気の変化で、職場の温度が変わること。誰かの給料が下がれば、それが会社全体に波紋のように広がること。
そういう中小企業の賃金制度の重さを、私は身をもって知りました。
「10%までなら大丈夫」
「最低賃金は下回らない」
その言葉は、法律の話としては正しいのかもしれない。でも、中小企業の社長が背負う責任の話ではなかった。 .
……

.裁判になったらどうか、ではないんです。訴えられなければ成功、でもない。「この会社で働き続けたいと思ってもらえるか」。そこが一番大事だった。
私は、その視点を、途中で見失いかけていました。 .
それに気づかれたから、ここに来られたんですね。

.はい。正直に言うと、「制度を作ってほしい」だけなら、他にも選択肢はありました。でも私は、中小企業の賃金制度を、社員との関係ごと一緒に考えてくれる人を探していたんだと思います。
北見さんの話を聞いて、「この人は、制度の前に社長の迷いを否定しない」。そう感じました。 .
ありがとうございます。

.それで、逆パワハラは防げますか。 .
かなり防げます。なぜなら、管理職を守るルールが明確になるからです。
評価は、反論合戦の場ではない。その前提を、制度として示します。

.北見事務所さんが「給与を引き下げる提案は基本的にしない」と言い切った理由も、今なら分かります。
中小企業の賃金制度は、社員を評価するための仕組みじゃない。社長が、どんな会社を作りたいのかを映す鏡なんですね。
私は、罰する会社を作りたかったわけじゃない。安心して、踏ん張って、やり直せる会社を作りたかった。
その原点に、もう一度戻りたくて。だから私は、北見さんに依頼しました 。 .
……社長、その思いがあれば大丈夫です。中小企業の賃金制度は、ここから必ず立て直せます。

.はい。遠回りしましたが、この経験があったからこそ、
「下げない能力主義」
「人が辞めない中小企業の賃金制度」
を、本気で考える覚悟ができました。 .