給与トップ > 相談事例集 > 「もう疲れました」管理職が診断書を出した評価面談の現実

社員一人一人から納得を得るための面談がたいへん

東京のコンサル会社に賃金制度作りを依頼して3年経ちました。そこから指導を受けながら実施したのは「面談」です。社員に対する期待や評価を話すのだが、相手の納得を得るという前提なので、面談する上司側は疲れてしまって…。

(大阪府・卸売業・社員100人・40代・専務《後継者》)

.今日は評価制度の“運用”の相談です。賃金制度自体は、もう3年前に作りました。 .
どこに依頼されたんですか。

.東京のコンサル会社です。制度設計は立派でした。理論も整っている。ただ、「運用が大事だ」と言われて、とにかく面談を重視するやり方を続けてきました。 .
評価面談ですね。

.はい。社員一人一人に対して、評価の理由を説明し、期待を伝え、そして相手の納得を得ることが前提でした。
社員は約100人。管理職が一人ずつ、1時間近く面談します。 .
かなりの負荷ですね。

.びっしりです。年間目標、行動目標、数値目標、自己評価、上司評価。目標管理制度として、すべて文章で書け、と。
社員にこの目標管理制度を見せたら、全員、引きました。 .
現場の反応は正直ですね。

.理念としては、正しいと思っていました。「対話が大事」「腹落ちさせることが成長につながる」。そう教えられてきましたから。
でも……現実は違いました。 .
どんな状況に。

.面談する側が、どんどん疲れていった。評価を伝えるたびに、反論される。感情をぶつけられる。「自分はもっと評価されるべきだ」「その評価は不公平だ」「納得できない」
それでも、「納得してもらうまで続けろ」という前提がある。 .
面談が、交渉の場になっていますね。

.まさにそれです。評価面談というより、説得と消耗の場です。そして、決定的な出来事がありました。 .
何が起きましたか。

.ある管理職が、私のところに封筒を持ってきました。中には、医師の診断書。
「ストレスによる体調不良」そして、「管理職を降ろしてほしい」と。 .
……

.その人、逃げるタイプじゃありません。真面目、部下思いで、対話を大切にしてきた人です。その人が、こう言いました。
「話し合えば分かり合えると思っていました」
「でも、どうしても理解し合えない人がいる」
「それでも、納得させろと言われるのが、しんどい」
「もう、疲れました」と。 .
……限界を超えています。

.さらに悪いことに、モンスター社員も出てきました。 .
逆パワハラですね。

.はい。評価を伝えると、「それはパワハラだ」「精神的苦痛を受けた」と強く言われる。管理職は萎縮し、言葉を選びすぎて、何も言えなくなる。結果、声の大きい社員だけが得をする。 .
評価を「交渉」にしてしまった結果です。

.そうなんです。「納得を前提」にした瞬間、突き上げる人ほど有利になる。管理職は、「次は自分が壊れるかもしれない」と怯えています。正直、この制度は、人を育てるどころか、人を壊していると感じました。 .
専務、それは運用の失敗ではありません。制度の前提が間違っているんです。

.前提、ですか。 .
はい。「全員の納得を得る」ことを前提にした評価制度は、組織が大きくなるほど、必ず破綻します。理解を得ることと、納得させることは、違います。

.……確かに。 .
では、北見事務所ならどうするか。

.そこを、教えてください。 .
面談は、やります。
ただし、位置づけが違います。北見事務所が勧める面談は、昇給や賞与の結果を「伝えるための面談」です。

.納得は求めない? .
求めません。合意形成もしません。会社としての判断を、誠実に、淡々と伝える。それが目的です。

.面談では、何を話すんですか。 .
3つだけです。
・今回の昇給・賞与の結果
・その判断に至った理由
・次に期待していること(目標)
目標は設定します。ただし、「同意を取る」「納得させる」という形にはしません。会社として、こう期待していますと伝えるだけです。

.時間は? .
一人あたり10分以内。長くしません。短いからこそ、感情のぶつかり合いにならない。

.反論されたら? .
受け止めます。でも、評価を変えるための交渉にはしません。「ご意見としては受け取りました」「ただし、今回の判断は変わりません」と線を引きます。

.それで、逆パワハラは防げますか。 .
かなり防げます。なぜなら、管理職を守るルールが明確になるからです。
評価は、反論合戦の場ではない。その前提を、制度として示します。

.……今まで、管理職を一人で戦わせていました。 .
そうです。だから、壊れた。制度は、社員のためだけにあるものではありません。管理職を守るためにもある。

.分かりました。まずは、管理職を守るところから、やり直します。 .
それが正解です。評価制度は、人を楽にするためのものです。人を疲れさせ始めたら、どこかが、間違っています。